それでも朝日は昇る 9章10節

 カザンリクの宿で、カティスは剣を抱きしめて座り込んでいた。
 アルベルティーヌ城で、ベリンダは己の膝を抱きしめて座り込んでいた。
 目の前の寝台では、己の大切な人が眠っている。
 自分たちの根底にあるものが、そっくり同じであることに、彼らは気づいている。目の前に眠る人たちが何に疲れ、なぜ死を願うかも――その苦しみも、痛いほどに判る。
 判るからこそ、言うべき言葉が見つからない。
 身じろぎ一つできず、ただ己に問いかけつづける二人の夜は、静かに更けていく。

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