アイラシェールは、胸の前で手を組み、祈りを捧げていた。
心を満たすのは恐怖。心を満たすのは期待。
恐い。心の半分が叫ぶ。
会いたい。心のもう半分が叫ぶ。
もうじき現れる己の運命の前におののき、アイラシェールはきつく目を閉じた。
カイルワーンは、扉の前で立ちすくんでいた。
この扉の向こうにアイラシェールがいる。この二年半、求め続け、追いかけ続けた彼女がいる。
間に合っただろうか。もう彼女は『拝謁の露台』から身を投げてしまっただろうか。
彼女は僕のことを見て、どう思うだろうか。驚くだろうか。喜んでくれるだろうか。それとも罵るだろうか。裏切り者となじるだろうか。
判らない。それでも。
この扉を開ける。開けて、向かい合うしかない。
己の、この運命と。
逃げることは、できない。
そして軋む音をたてて、扉はいっぱいに開かれた――。